VP EYES

粉骨砕「身」、全てをかけて宿敵にぶつかれ!
9年ぶりのベスト4進出。
対戦するのは宿敵山形「みちのくダービー」
相手の攻撃のキーマンに球際強くぶつかり、良い立ち位置を取って決勝を目指せ。

 明治安田生命J1リーグが終了し、いよいよ今シーズンも、天皇杯JFA第98回前日本サッカー選手権大会を残すのみとなった。仙台は2回戦でJ3リーグ群馬と対戦。現在はCSKAモスクワ在籍のFW西村拓真のハットトリックなどで4-0で完勝した。3回戦はMF23中野嘉大のゴールでJ2リーグ大宮に1-0で勝利。4回戦・横浜FM戦はFW11石原直樹が2ゴール。横浜FM相手に相性の良いFW19ジャーメイン良にもゴールが生まれ、3-2で点の取り合いを制した。準々決勝は今シーズン、リーグ戦では2敗を喫した磐田との対戦。前半早々に先制を許したが、86分、ジャーメインのミドルシュートが決まって1-1の同点となり、延長戦でも決着がつかずにPK戦に突入。試合中、何度もファインセーブを見せていた日本代表GK1シュミットダニエルが足でPKを止める活躍を見せ、4-3でPK戦を制し、2009シーズン以来、クラブ2度目となる9年ぶりの準決勝進出を決めた。

 2009シーズンの天皇杯は、J2クラブとして挑んだ大会であり、J2リーグを優勝して来シーズンのJ1リーグ昇格を決めた年であった。準決勝はG大阪と現在は改修工事中の国立競技場で対戦。J1リーグのビッグクラブ相手にどこまで戦えるかという意味でも大きな試合だったが、1-2で惜敗した。あれから9年の月日が経ち、仙台はJ1リーグの舞台に定着し、タイトルを本気で狙うクラブとなった。タイトル獲得の大きなチャンス、絶対にものにしたい。

 そして、準決勝で立ちはだかるのはJ2リーグの山形だ。2015シーズンのJ1リーグ以来の「みちのくダービー」、宿敵との対決となる。

 「みちのくダービー」の歴史は古く、仙台の前身、東北電力サッカー部と、山形の前身、山形日本電気/NEC山形サッカー部の時代、から約30年もの間、しのぎを削りあって来た。1990年代前半は東北社会人リーグ、1990年代後半はJFL(当時の仙台はブランメル仙台)、そして1999年のJ2リーグ開幕以降は互いに東北のライバルクラブとして、激しい戦いを演じてきた。仙台・山形のJ2リーグ参入以降のリーグ戦対戦成績は仙台16勝、山形7勝、引き分けが4試合だ。しかし、天皇杯での対戦は1995シーズンの東北予選ブランメル仙台-NEC山形戦までさかのぼる。つまり、Jリーグ参入後は一切対戦が無かったのだ。現在のクラブ名になってからは天皇杯では初対戦だ。

 ここ3シーズンは、仙台がJ1リーグ、山形がJ2リーグのためリーグ戦での対戦は無いが、2009シーズンのように仙台がJ2リーグ、山形がJ1リーグという時代もあった。仙台は2008シーズン6月の対戦以降、山形にリーグ戦3連敗という苦しみを味わったこともある。互いに街の威信をかけた負けられない戦いは、その前のリーグ戦の状況は一切関係なく、確実に激しい意地のぶつかり合いとなる。今は仙台がJ1リーグなのだから勝って当たり前、という簡単な試合には絶対にならない。まずは全力で山形にぶつかっていかなければ、悲願のタイトルを獲得することはできない。

 山形は昨シーズンから、水戸、千葉、愛媛で指揮を執った木山隆之監督が就任している。昨シーズンは11位、今シーズンは12位で、J1リーグ復帰は成し遂げられなかったが、丁寧なビルドアップで攻撃を組み立てるサッカーを地道に根づかせようとしている。そして天皇杯2回戦はJ2リーグ岐阜、3回戦は柏、4回戦はFC東京、準々決勝はJ1リーグ連覇を果たした川崎Fを倒して4年ぶりのベスト4進出を果たし、木山監督は来シーズンも指揮を執ることが既に決定している。

 攻撃の核となっているのはチーム最多12ゴールを挙げた神戸から期限付き移籍中のMF16小林成豪だ。推進力のあるドリブルと、シュート精度の高さ、セットプレー時の打点の高いヘディングなど、非凡な才能を誇っている。また浦和、栃木、愛媛でプレーしたFW11阪野豊史も9ゴールを挙げて得点源となっている。清水、鹿島でJ1リーグでの経験も豊富なMF14本田拓也も要警戒だ。守備では五輪代表経験を持つGK21櫛引政敏がリーグ戦では守護神に定着しているが、天皇杯はGK1児玉剛が活躍しており、どちらが出てきても手強いだろう。

 仙台としては攻撃のキーマンに対し、MF34椎橋慧也やMF16野津田岳人が仕事をさせないよう、球際で激しさを持ってぶつかっていきたい。その上でここ数年磨き上げてきた良い立ち位置を取るサッカーを見せ、山形の守備組織を丁寧に崩していきたい。しかし、どんな形でも勝てば決勝進出となる。試合終盤で相手がリードをしている際などは、バランスを崩してリスクを冒す戦いも必要だ。あらゆる状況を想定し、J1クラブとしての意地を見せたい。

 ダービーは絶対に負けられない。粉骨砕「身」、全てをかけて必ず決勝進出を決めよう。