ベガルタ仙台は積極的な姿勢を取り戻したい。守備では相手に果敢に挑みかかるプレッシャーを迷わずしかけ、攻撃では速攻でも遅攻でも、相手ゴールに近づくにつれ厚みと迫力を増して多くの選手が走りこむ。これらは、終盤戦で新しく身につけようとしていることではなく、今シーズンのチームがずっとスタイル構築に励む中で基本としてきた姿勢だ。
明治安田J2リーグ第30節・群馬戦での仙台は、この積極性を発揮することができず、攻撃の迫力を欠いてしまった。悪い試合内容であっても冷静に守って2試合連続無失点で終えたことは収穫だが、それ以上にチャンスの少なかった攻撃面で大きな悔いが残った試合だった。
懸命に走って味方からのパスを引き出したりボールを持った味方をサポートしたりしたMF11郷家友太は、群馬戦後に「もっと勇気を持って前に(パスを)つけて潜っていくことなどを繰り返していかないと」と反省した。前向きなプレーが少なく、何度も組み立て直すことが多かったこの試合。先発メンバーが大きく入れ替わったり、相手に守備の人数をかけられて崩すのが難しかったりという要因はあるが、シーズンを通して発揮してきた仙台の迫力あるサッカーを自ら手放してはいけない。DF22小出悠太は「間違いなく誰が出てももっとできるはずだし、練習でもそういう雰囲気にまでいけている」と、普段の積み重ねを次こそプレーに反映させようと言葉に力をこめた。そうだ、仙台はこんなものではない。
今節の相手である藤枝は、超攻撃的スタイルの持ち主だ。積極的に全ポジションが前に出て、スピードのあるパスやドリブルを駆使して相手を攻め立てる。ボールを取られても即時奪回する守備の鋭さも特徴だ。エースFW9矢村健を筆頭に、元仙台で速さと強さを兼備するドリブラーのMF13大曽根広汰といった攻撃の特徴が目立つ選手たちがそろう。右サイドから素早くしかけるDF97モヨマルコム強志や中盤のゲームメイクとミドルシュートが光るMF36世瀬啓人のように、途中加入選手も実力をアピール中。前節での連勝で勢いを加え、さらに攻撃性を増しているだろう。
仙台はユアテックスタジアム仙台でのサポーターの後押しを受け、この藤枝を飲みこみ、押しこむ積極性を取り戻したい。相手の縦パスが出る前に強烈なプレスで潰し、FWにパスを通されたとしても二度、三度と追いかけてボールを奪うことが必要だ。中盤での守備職人であるMF6松井蓮之やMF17工藤蒼生、前線でプレッシャーのスイッチ役となりながらゴールも狙うFW98エロンらを代表にした、積極果敢なプレーが望まれる。そしてボールを持てるときには、それ以上の積極性が必要だ。MF27オナイウ情滋らが一気に相手ゴール前に迫る速攻はもちろん、じっくり自陣からボールを動かす遅攻でも相手ゴール前が近づいたら一気にスピードアップしてシュートを狙いたい。FW7中島元彦やMF14相良竜之介の鋭い一振りにも期待だ。
PASSIONを燃やし、再び自分たちの内にある積極的姿勢を取り戻す。そしてそれを、互いをサポートしながら迫力とともに前進するプレーにつなげる。勝利をつかむための積極性を、選手たちにはこのホームで存分に発揮してほしい。